どこにでもある戯れ言日記です。
日々のつぶやきから萌えの叫びまで。
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PKGDCQ、バジルとシュウカの短編。
物語を書くのが好きな子供と、歌を奏でるのが好きな補佐。
性格は全く違うけど、こいつらは仲良くなれそうだと思う。
物語を書くのが好きな子供と、歌を奏でるのが好きな補佐。
性格は全く違うけど、こいつらは仲良くなれそうだと思う。
「ふわあ、これ全部物語の本なんですか?いっぱいあるんやねぇ」
ラフィーダの補佐は感嘆の声を上げて、あっという間に書庫の奥へと消えていく。
バジルは慌てて後を追った。
――歌を好むこの魔族は、
物語を語り継ぐローズワースの文化に興味を持ったらしい。
ぜひとも異国の詩を見たいとせがまれ、
会合の空き時間を使って書庫に案内することになった。
「あっちが歴史の棚で……向こうのは教会のんかな。あ、こっちは何です?」
「吟遊詩人が書いた詩篇です。寄贈されたものがほとんどですね。
言葉のみで語り継ぐことに重きを置いていますから、歌の詩とは随分違うかと」
「……みたいですね。音楽がなくても成り立ってるというか……。
読めへん言葉もありますけど、通して読んだときの響きが綺麗ですわ」
シュウカはそう答えながら1冊を取り出し、ページをめくった。
時折こちらの言葉に首をひねり、指でなぞりながら小声で呟いている。
こちらが彼女の魔族語を理解できないように、
彼女もまたこちらの言葉を分かりかねているのだろう。
そういえば、以前アリアドネの補佐も書庫を訪れていた。
彼女は確か、人族にまつわる書物を興味深げに読んでいた覚えがある。
異種族の書物を読むことが魔族の間で流行っているのだろうか?
……などと他愛のない空想を繰り広げる。
「この本、ローズワースにおる間だけでいいから借りれませんか?」
シュウカの声でふと我に返る。
いつの間にか本棚の奥に立っており、見覚えのある本を手にしている。
「国が違っても歌みたいなもんやさかいに、
読んでるだけではよう覚えられませんで。声出して練習したいんです」
「あ、その……貸し出しはできませんが、
その本でしたら写しを差し上げましょうか?」
「え?そんなん、いいんですか?写しいうても国のもんですやろ?」
予想外の申し出に驚いたようで、自分の顔と手元の本を交互に見つめる。
有難くこちらの提案に乗るべきか、断るべきか迷っているのだろう。
「製本する前の紙束ですが、それでもよければ。
……それに、その詩編は私が書いたものですから」
「え……っ、えぇ!?これ、バジル様が書かはったんです!?」
シュウカは細い目をいっそう丸くした。
きっと書庫を管理する誰かが勝手に入れたんだろうと説明したが
食い入るように本を見つめる彼女にはほとんど聞こえていないようだった。
「……価値のある物ではありませんが、何かの足しになれば幸いです。
お帰りになるまでにはご用意しますので」
「いえそんなん!こんな素晴らしい詩を貰えるなんて!ありがとうございます!」
シュウカはぱっと笑顔になり、持っていた本ごとバジルの手を取った。
バジルが怯むのもお構いなしに二度、三度と握った手を上下に振り
「次に来はる時までには、ちゃんと読めるようになっときますさかいに。
その時はまた聞いてください」
「い、いえ……喜んでいただけたら何よりです」
彼女をそれ以上刺激しないようゆっくりと手をほどく。
私が語るのも差し出がましいですが、と前置きして言った。
「物語はその土地で語り継いでいくものです。
無理して読み解かなくとも、貴方なりに訳してみてはいかがでしょうか」
この不思議な訛りを持つ異国の民が、どう歌にするのかも興味があった。
それに、そもそもあれは戯れに書いた拙いもので
他国に広まる前にシュウカの手で直してほしいという思いもあった。
もっとも彼女はバジルの本音に気付くそぶりもなく、満足げな顔でうなずいた。
ローズワースとラフィーダの会合が終わった数日後、
海で竪琴を鳴らしながら異国の詩に旋律を付けるシュウカと
書庫の一角で他国の言葉にまつわる書物を読みふけるバジルの姿があった。
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