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どこにでもある戯れ言日記です。 日々のつぶやきから萌えの叫びまで。
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2回戦イベントのアフター短文。
エア絡みの話ですのでご注意ください。


騎士団によるバトルロワイヤルは大盛況のうちに幕を閉じた。
多くの者は互いの健闘をたたえ合い、また来年の大会に向けて意気込みを新たにした。

――ところかわって、寄宿舎の一室。
いつもの日常に戻りつつある人々の声を扉越しに聞きながら、
カメリアは自室でひとりうずくまっていた。
頭の中には今でもバトルロワイヤルでの歓声や剣戟の音が響いている。

今度こそ手柄を挙げ、栄誉を勝ち取ろうと意気込んでいたカメリアを待っていたのは
あまりにもあっけない幕切れだった。
仲間同士の戦闘にも僅かながら手ごたえを感じていたはずなのに、
気が付けば場外に下げられていた。
一体何が起きたのか――あちこちが痛み、焦げ付いた跡が残る身体に
頭が付いて行かなかった。

(記憶に残らないほど、あるいは記憶が飛ぶほどの一撃を受けたか……
いずれにしても。交戦する間もなく、杖を向けるほどの隙もなく、容易く負かされた)

耐えがたい事実を突きつけられたカメリアには、誰の声も遠く感じられた。
まるで厚い氷に遮られているような、何の温度も感じられない世界で
ずっと部屋に篭り続けていた。

……近くでノックの音が聞こえたような気がして、ようやく意識を外に向けた。
間違いない、誰かが自室の扉を叩いている。
返事をする気力もなく黙って音のする方を見つめていると、
やがてノックが止んで扉の隙間から紙切れが差しこまれた。

のろのろと身を起こして扉まで歩み寄り、紙を拾い上げる。
二つ折りにされたメモの表面には、
見知らぬ紫髪の青年からこれを渡すよう頼まれたという走り書きがあった。
開いて中を見ると、見知った綺麗な文字でただ一文。

『悪いことは言わない、早く戻ってこい』

その言葉を目にした瞬間、カメリアは今までにないほどの絶望感に打ちのめされた。
憎き義兄の――リュートの筆跡を見間違えるはずはない。
この警告は、紛れもなく彼が書いてよこしたものだ。
正面から向き合うことを避け、他人に言伝を頼むという遠まわしな手段を使って。

(やはり、あいつも、あの場にいた。全て見ていた。私が、無様にやられる様を)

奴も来るかもしれない、という予想はしていた。
騎士団の一員となった自分と対峙し、負かすために。
だからこそ目にものを見せてやろうと心に誓ったはずだった。
しかし蓋を開ければリュートと顔を合わせるまでもなく、
望みはいともたやすく踏み潰された。
きっと奴は一部始終をどこかで見ていたのだろう。そして、完全に自分を見限った。
見え透いた世辞や上辺だけの気遣いもなく、こちらに命令してきたのが良い証拠だ。

(もはや……あいつは私を、一族の座を争う仇敵として、見ていない。
自分を絶対的な強者、こちらを憐れな弱者と思っている。まるで無力な子供のように。
対立する価値も意味もない、と)

身体の熱が失われ、手足の先から冷えて固まっていくような錯覚。
頂点の座を求めてあがけばあがくほどに、栄誉は遠ざかっていく。
このままではリュートや一族を見返すどころか、却って見下されていくばかりだろう。
事によると、跡目争いから降ろされてしまう可能性もありうる……。
一度浮かんだ不安は急激に膨らんでいき、カメリアの心を黒く塗りつぶしていった。

(私は、完璧でなければならない。
誰もが認める栄誉を勝ち取り、一族の長にならなければ、ならない。
しかし以前のカロス襲撃に、今回の大会。絶好のチャンスを、二度も逃した。
一体どうすればいい。どうすれば――)

カメリアはメモを握りしめたまま床に崩れ落ち、頭を抱える。
しかしいくら考えても、現状を打開するための案は浮かばなかった。


人の話を聞かなすぎ、一人で殻に篭りすぎなので今後何とかしていきたいです。
詳細はまた3回戦の展開次第で考えていきますが……。
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